こんにちは。技術開発室の井上です。
2026年6月27日、札幌市産業振興センター(東札幌)にて開催された Open Source Conference 2026 Hokkaido(以下、OSC北海道)に参加しました。今回は、当日の様子と印象に残ったセッションについてお伝えします。
OSC北海道はオープンソース全般をテーマとする技術カンファレンスで、今回は参加者415名という大規模なイベントとなりました。ここ数年は日程の都合で参加できていなかったのですが、久しぶりに参加してみると、以前と変わらぬ熱気と充実した内容で、大変有意義な一日となりました。
印象に残ったセッション
新しいJavaを学んで・使っていこう!
千歳科学技術大学の山川先生によるセッションです(発表資料はこちら)。
冒頭で参加者アンケートを実施し、その結果を参照しながら話を展開するスタイルが新鮮で、双方向性のある発表手法として大変参考になりました。
アンケートでは「最初に学んだプログラミング言語」としてC言語が最多、次点がJavaという結果でした。一方、近年の若い世代は高校のカリキュラムでPythonを学び、大学でも文理を問わずPythonを用いたデータ分析やAI活用を学習しているとのことです。そこで生じるのが「Pythonを学んできた人が、あらためてJavaを学ぶ意義はあるのか」という問いです。
これに対するセッションの答えは、「プログラミング言語で本来学ぶべきものはパラダイムや設計思想であり、記法はそのための手段に過ぎない。記法が学習の障害になってはならない」というものでした。こうした背景のもと、Javaは近年のバージョンアップにより学習者にとって扱いやすい言語へと改善が進んでいます。こうして、Javaが初学者により優しい言語仕様になることで、Javaでも設計思想などを学びやすくなるだろうというお話でした。
また、セッションでは、比較的新しいバージョンで導入された機能として以下が紹介されました。
- var(ローカル変数の型推論):記述が簡潔になる一方、可読性の観点から意見が分かれる機能でもあります。
- Switch式:switchの結果を式として扱い、そのまま変数へ代入できるようになりました。
- Text Blocks:改行を含む文字列リテラルを扱いやすくなりました。
- Records:getterやsetterを記述することなくDTOクラスを定義できます。
- Compact Source Files + Instance Main Methods:従来と比較して大幅に短いコードでプログラムを実行できるようになりました。
実装例)
void main() {
IO.println("hello world");
}
特に最後の機能は初学者の導入ハードルを下げるものであり、教育の現場において効果を発揮しそうです。
開発体験は劇的に良くなった。じゃあ、品質は? 〜AIに書かせる時代に必要な、ガードレールの考え方と現場の課題〜
サイオステクノロジー株式会社様によるセッションです。
「AIを使えばコードを書く速さでは差がつかない。差がつくのは、AIの出力に対する責任の持ち方、事故を止める仕組み、再現可能な開発フローの構築である」という主張が印象的でした。「F1カーが数百キロで走行できるのは強力なブレーキがあるからこそ」という例えは非常に示唆に富んでいます。AIを活用して高速に成果物を生み出し続けるためには、それに見合う強力な「ブレーキ」が必要だということです。
AIの出力を制御する手法については、「指示で縛る」→「構造で縛る」→「実行時に監督する」の順に堅牢になっていくとのことでした。「指示で縛る」だけでは不十分な理由として、コンテキストが増大すると当初与えた制約が無視されやすくなる点が挙げられており、日常的にAIを活用している方であれば心当たりのある課題ではないでしょうか。
また、AIが生成したコードは技術的負債になりやすいため、その対策の第一歩としてArchUnitなどの静的解析ツールの導入が有効であるとの紹介がありました。
AI今昔物語
瀬戸田慎一様によるセッションです。AIという概念が1956年頃に誕生し、幾度かのブームと冬の時代を経て現代に至るまでの歴史を概観する内容でした。「AIは何十年も前から存在する概念である」ということは漠然と認識していましたが、あらためて歴史を追うと感慨深いものがあります。
今後想定される課題として、「高品質な人間由来データの枯渇」と「AI生成データによるモデル品質の劣化(モデルコラプス)」が挙げられていました。
また、あるRedditユーザーの正体が実はGPT-3でありだったというエピソードや、「CAPTCHAは逆チューリングテストである」という表現など、興味深い話題が多いセッションでした。
さくらのAI Engineで作る:個人開発で実用水準を満たすAIネイティブなシステム設計
さくらインターネット株式会社様によるセッションで、個人開発においてAIを活用したシステムを構築する際の勘所についての内容でした。
冒頭の「コードは最悪作り直せるが、DB設計の失敗は取り返しがつかない。AIエージェントで開発する場合も、DB設計だけは必ず入念にレビューすべき」という指摘には強く共感しました。
具体的なユースケースとして、「在庫管理をしたいが商品登録が煩雑で継続できない」という課題に対し、コード値でAPIから商品情報を取得し、AIが整形するという解決策が紹介されていました。LLMが特に力を発揮するのは「情報の正規化」と「自然言語の読み書き」であるという整理は、実務でAIの適用範囲を検討するうえでも参考になる観点です。
プロンプト改善のコツとして、テストデータを用意したうえでプロンプトの改善自体もAIに任せると回答品質が大きく向上するとのことでした。
ちなみにさくらのAI Engineはリクエスト3,000回まで無料で利用でき、自動的に従量課金へ移行することもないとのことです。お試しでAIを触ってみたい時などに活用できそうですね。
北海道にインターネットを最初に持ってきた人たちの話
北海道にインターネットを導入した方々によるトークセッションです。非常に人気が高く、会場はほぼ満席でした。開始前に配布された、当時のインターネット用語をまとめた資料も貴重なものでした。
このセッションでは、JUNETと呼ばれる、日本の学術機関を接続したネットワークが北海道に導入された経緯と、その苦労話などが聞けました。
特に興味深かったのは、今の北大のドメインである「hokudai.ac.jp」にまつわる経緯です。もともとJUNET構築時に「hokudai.junet」として登録されていたものが、ac.jpドメインへの移行時に名前を変えず引き継がれたそうです。他の旧帝国大学のドメイン(u-tokyo.ac.jp など)に合わせて「u-hokkaido.ac.jp」などへ変更する案も時折挙がるものの、変更のコストが高すぎてなかなか実現に至らないとのことでした。
LT登壇について
イベント開催数週間前に公式ページを確認したところ、LT枠に若干空きがあったため、勢いでLT登壇に申し込みました。自分が参加するイベントでLT枠が空いているのを見ると衝動的に埋めたくなりません?
ということで、イベントの締めくくりとなるLTでは、「検証!PostgreSQLだけでボードゲームは作れるのか!?」というタイトルで発表を行いました。「何か少しでもOSSに関係ありそうなトピックの方が良いな」と思ってひねり出したテーマがこれでした。
LTでは、PostgreSQLのFunctionを用いてリバーシを実装した話と、デモを行いました。結論としては、PostgreSQLでボードゲームはかろうじて実装可能です。
DDLと遊び方はGitHubで公開しています。ご興味のある方はぜひお試しください。
懇親会
懇親会は札幌ビール園にて開催されました。参加者が150名近くにのぼるため、1階フロアの貸し切りという規模でした。ジンギスカンを囲みながら、多くの参加者の皆様と技術談義を含めた交流ができ、大変貴重な機会となりました。

おわりに
久しぶりのOSC参加でしたが、セッション・LT・懇親会のいずれも学びと刺激に満ちた一日でした。来年もぜひ参加したいと考えていますし、機会があれば他地域で開催されるOSCにも足を運んでみたいと思います。
ちなみに今年参加しようかと考えているカンファレンスはあと2つあります。